乳幼児がいる家では、寝かしつけの際にママが隣で寝ているというのもよくあることですよね。大人でも真っ暗な部屋がいい人と、明るい部屋がいい人とそれぞれですが、子どもにとってはどっちがいいのか、悩んでしまう人も多いのではないでしょうか?
・赤ちゃんを寝かしつけるとき、電気をどうしたら良いか迷っている
・豆電球の明るさなら問題ないみたいだけど、どこまで明るいといけないの?
・真っ暗、豆電球を付けた薄暗い明るさのどちらの方がいいの?
・明るい方が寝てくれるけど、明るいところで寝るのはいけないの?
など、赤ちゃんも明るい暗いの好みがあって、ママもどうするのが良いのか悩んでしまいます。健康や、良質な睡眠のためにはどちらが良いのか、ママにとっても深い悩みのようです。そこで今回は、乳幼児の寝かしつけの際、部屋の明るさはどれくらいがいいのか、まとめてみました。
- 赤ちゃんの体内時計は1日25時間
生まれてから1ヶ月くらいまでは、授乳してお腹いっぱいになると眠る約3時間のサイクルです。それが1ヶ月を過ぎると、人間の最も原始的な体内時計である25時間サイクルになります。3ヶ月までは25時間の体内時計を24時間サイクルに合わせリセットする機能を作り、4ヶ月ごろから徐々に24時間サイクルに合わせられるようになっていくようです。
- 体内時計とは?
体内時計とは、人間に備わった周期リズムのことです。無意識でも日中は活動状態に、夜間は休息状態に切り替わるのは、このリズムのおかげなんですね。人間の体内時計の中心は、眼球の後ろに位置する「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という部位にあります。眼球の後ろにあるので、光の刺激を受けやすく、光の刺激で体内時計がくるってしまうことも。
- 体内時計をリセットするのは「メラトニン」
母乳やミルクにも含まれるメラトニンは、体内時計のリセットに重要な役割を持っています。赤ちゃんは4ヶ月ごろから自分でメラトニンを分泌できるようになるため、体内時計をリセットできるようになり、昼夜のリズムがつくようになるんですね。
・メラトニンについて
メラトニンは、脳の松果体というところから分泌されるホルモンです。光の刺激により抑制されるため、夜間にさかんに分泌されます。幼児期に一番多く分泌され、成長期をピークに加齢とともに分泌量が減少するホルモンです。副交感神経系の働きが強くなることで分泌が促進されます。朝目が覚めてから14~16時間ほど経過すると、体内時計の指令で分泌される仕組みです。
・メラトニンの作用
睡眠促進作用、外界の24時間周期に体内時計を同調させる作用、抗酸化作用、強力な免疫細胞であるNK細胞を活性化させる作用などがあります。
- 寝る2時間くらい前から照明を暗めにするか、間接照明を用いるように
メラトニンは400ルクス以上を浴びると分泌されにくくなります。300ルクスの明るさでも長時間浴びるとメラトニン抑制につながってしまうようです。(宮崎総一朗氏の著書「脳に効く『睡眠学』より」)自然に眠くなるようにするには、300ルクス以下に照明を落とすことが重要です。おむつ替えなどに照明が必要な際は、直接目に入らない間接照明を利用するといいですね。
・明るさの目安
ろうそく1本分の光が大体1ルクス程度です。
スマホの光 80~90ルクス
パソコン画面 220~280ルクス
LEDスタンド(白色系) 1100~1200ルクス
コンビニ 2500ルクス
蛍光灯 500~700ルクス
豆電球 9ルクス
月明り 0.1~0.3ルクス
晴天の屋外 100000ルクス
晴天の室内窓際 5000ルクス
スマホやパソコンの明るさは、ルクスで見ると低いですが、ブルーライトを多く含んでいます。ブルーライトとは、可視光線の中でも最も紫外線に近い波長(380~500nm)の青い光です。
- 寝る前の照明の色は暖色系を選ぶ
蛍光灯の色はメーカーによって呼び方が異なりますが、昼光色。昼白色・白色・温白色・電球色の5色が主なカラーです。前者が一番白っぽい色で、後者になるにつれて赤みを帯びる色になっていきます。白色に近い方は、すがすがしい爽やかな光で頭が冴え、赤みを帯びたオレンジ色に近い方は、落ち着いた穏やかな光でリラックス効果があります。メラトニンの分泌抑制が一番低いのも電球色です。
- 寝かしつけのときの照明は豆電球の明るさで
真っ暗にすると恐怖や不安を感じてしまう子も多いです。この時、なるべく光は直接目に入らないところで点灯するようにしましょう。赤ちゃんは基本的に仰向けで寝ています。光を感じる網膜は、目を閉じていても光の刺激を受け取っているので、豆電球がむき出しになっているタイプの照明だと刺激が強いです。可能であれば足元で点灯するようにしましょう。
- 入眠後なるべく30分以内に豆電球も消しましょう
人間が熟睡できる明るさは0.3ルクスと言われています。0.3ルクスというと、ほんのり明るい月明りの明るさです。遮光カーテンを閉めて、窓の外の光が隙間からわずかに漏れるくらいがちょうど良いということですね。細胞や組織の成長を促し、体の成長を促す成長ホルモンも寝ているときに多く分泌されます。成長ホルモンは、睡眠後30~1時間の深い眠りの時に多く分泌されますので、なるべく早くに暗い状態にするのが良いでしょう。
- やってはいけないことは?
・豆電球を常夜灯にする
高齢者を対象とする調査ですが、寝室が3ルクス以上であると肥満症や脂質異常症の有病割合が約2倍になることが認められています。入眠したら消すようにしましょう。
・明るい部屋でずっと寝かせる
メラトニンの分泌が抑制されて、体内時計がくるってしまいます。
・眠る前にテレビやスマホに見せる
テレビやスマホの光に含まれるブルーライトは、良く晴れた朝の空の光と同じで、目に強い刺激があります。眠気が遠のいてしまい、入眠に時間がかかる可能性もありますので、注意が必要です。
・寝る直前に激しい動きをして遊ぶ、運動する
副交感神経が働かず、目が覚めてしまいます。
・夜中のおむつ替え、授乳でしっかり照明をつける
強い光を浴びることで、メラトニンの分泌が抑制されてしまい、赤ちゃんが起きてしまう可能性もあります。おむつ替えの時は、足元など赤ちゃんの目に入りにくいところで、オレンジ色のデスクライトなどをつけるようにしましょう。お世話が終わったらなるべく早く消すようにしてくださいね。
- まとめ
原始の生活には当たり前に電気などありませんでした。日が昇ったら起きて、日が沈んだら眠る、そんなサイクルで生活していたのです。白熱電球で明るい夜を作り出してから数えても、まだ100年ほどしかたっていません。人間はいまだ、完全に明るい夜に適応できていないということです。明るいところで眠るのが悪影響なのは、赤ちゃんだけではありません。大人も光の刺激によって睡眠障害を起こすことがあります。それほど、光による刺激は強いものだということです。
赤ちゃんの体内時計を整えるには、朝起きて夜眠るという規則正しい生活とともに、明るくなったら起きて、暗くなったら眠るという原始的な生活に近づけてあげるのがベター。寝る2時間くらい前から、少しずつ部屋の照明をオレンジ色にして、自然に眠くなる環境を作るようにしましょう。