子宮内膜症や男性因子による原因はイメージが付き易いと思います。
今回ご紹介するのは、粘液の異常による不妊です。
それも、子宮頸管という場所で分泌されている粘液なのですが、この子宮頸管という器官についてはご存知でしょうか?
子宮頸管について
子宮腔と膣をつなぐ長さ2~3センチの筒状の管を子宮頸管といいます。
この筒状の壁からは、月経周期のサイクルで頸管粘液が分泌されています。
通常は細菌が子宮に入るのを防ぐ役割をする粘液ですが、排卵前になると量が多くなります。
ちょうど卵の白身にような状態になっている精子にとっては快適な環境が作り出される事になります。
頸管粘液がよく分泌された状態になっている排卵前に性交があると、射精された精子がこの頸管粘液の中に蓄えられ、そこから順次、卵管のほうへと精子が送りだされると言われています。
排卵日当日の性交より、排卵日前の性交のほうが妊娠しやすいと言われる理由はこのためです。
しかし、排卵が終わると頸管粘液はかたく粘り気がなくなります。
排卵から2日ほど経過すると、もう精子はその中に入っていけなくなります。
子宮頸管と頸管粘液は、受精する上でとても重要な役割を担っている事が分かると思います。
その粘液に何らかの異常が発生してしまい、精子を受入れない、もしくは精子を送り出せない状態になってしまうと、不妊へと繋がってしまう結果となります。
【頸管粘液の異常と治療法】
では、頸管粘液の異常だと考えられるのはどのようなケースなのか?
不妊検査の1つに、排卵日頃に性交をして、その数時間後~数日後に頸管粘液を採り、その中で精子が動いているかどうかを調べる検査があります。
これがヒューナーテストです。
ヒューナーテストを何回しても、頸管粘液の中に精子がほとんどいない人がいます。
この原因として考えられるのが、
・頸管粘液に異常がある
・抗精子抗体がある
・そもそも性交がうまくできていない
という3つのケースです。
※ここでは頸管粘液についてもう少し掘り下げてご紹介し、抗精子抗体については別の記事でご紹介します。
頸管粘液の異常としては
・頸管粘液の酸性度が高い
・頸管粘液が硬い
・頸管粘液の量が少ない
といった症状はありますが、実はその多くは原因が分かりません。
ただし、原因がはっきりしているものの一つは、排卵誘発剤の副作用です。
クロミフェンをもちいて排卵誘発を行うと、そのうち15%の人では頸管粘液の量が少なくなります。
この場合には別の排卵誘発法を用いる必要があります。
その他、早期ガンの手術で子宮頚部の円錐切除術を行った場合には、頸管粘液を分泌する部分を切除するため、頸管粘液がほとんど出なくなることはあります。
頸管粘液を改善する治療法として、卵胞ホルモン剤を用いることはありますが、ほとんど効果はありません。
結局の所、妊娠するにはどういう治療が必要なのか?
頸管粘液異常が起こってしまっている場合、せっかく射精された精子が子宮頸管でブロックされてしまうので受精まで至らない事が問題となるわけです。
しかし、頸管粘液異常を改善に導く効果の高い治療法はあまりないのが現状です。
ではどうやって妊娠可能な状態へ導くのか?
頸管粘液異常を改善する不確実な治療法ではなく、頸管粘液からの影響がない状態を作りだす為に子宮頸管をバイパスする事で、子宮腔まで直接精子を送り込む人工授精(AIH)が最も有効な治療法となります。