「抗体」という名が付いている通り、精子を異物と判断して抗体ができ排除しようとする免疫機能の異常です。
よくよく考えてみると女性の体にとって精子は異物です。
しかし、通常は精子に対する抗体が作られることはりません。
ところが!
稀に精子に対する抗体を持っている女性がいます。
精子に対する抗体持っているいう事は、体の中に入ってきた精子を敵として見なし攻撃するという事です。
インフルエンザなどの予防接種では、わざと体に菌を入れて抗体を作る事で重篤化を防いでいますが、精子に対する抗体を生まれながらに持ち合わせている事になります。
この抗体をもってしまうと、せっかく射精された精子が頸管粘液に入ってこようとしても、抗体に攻撃されて動けなくなり子宮に入れなくなってしまうのです。
精液所見に問題がなく、ヒューナーテストを何回か行った結果が悪かった場合、女性に抗精子抗体がないかどうか調べます。
抗精子抗体の種類について
1.抗精子凝集抗体
精子の頭部と頭部をくっつてけてしまう抗体、精子の頭部と尾部,精子の尾部と尾部をくっつけしまう抗体があり、大きな精子の凝集塊を作ってしまうために、精子の子宮内への進入が妨げられてしまう。
2.抗精子不動化抗体
精子の尾部(精子の尻尾)に働き,精子がふれたとたんにその運動を止めさせてしまい精子が動けなくなってしまう。
抗精子抗体の検査法と治療法
抗精子抗体を調べるには血液検査を行います。
比較的簡単な方法ではあるんですが、この検査には保険が効きません。
従って、費用についても病院・クリニックによって様々ですが、大体1万~2万円程度が相場になっています。
費用面の事もあり、病院やクリニック側からは他の検査(子宮頚管粘液など)で異常が見られた場合に提案してくる事が多いようです。
では、抗精子抗体を持っている=陽性だった場合はどのような治療法があるのでしょうか?
【抗精子抗体がある場合】
抗精子抗体の説明をしてきましたが、抗精子抗体は何となく頸管粘液中にあるのかな?と思った方もいらっしゃるかと思いますが、そうではないんです。
血液検査で分かるくらいですから、抗精子抗体は女性の体のどこにでもあります。
なので、人工授精をしても卵管や子宮腔にいる抗体に攻撃され精子は動けなくなり受精までたどり着く事が出来ません。
このため、抗精子抗体がある場合には体外受精のみが有効な治療法されています。
コンドーム法
性交の際にコンドームを用いて女性が精液にふれない期間を設けることによって、抗体価が下がり、自然妊娠可能とする治療法。
※体外受精による治療法が確立されている現在では採用されていない。
ただし、抗精子抗体にもいろいろな種類があります。
そのなかで不妊と関係するのは「精子不動化抗体」という抗体です。
そのほかの種類の抗体の場合には、体外受精をしなくても妊娠可能な場合もあります。
※この精子不動化抗体があるかどうかも血液検査で調べる事が可能です。
ちなみに、「夫の精子と相性が悪いのですか」などと聞いてくる人も多いのですが、抗精子抗体はすべての人の精子に対する共通の抗体で、夫婦の相性の問題ではありません。
【抗精子抗体のある男性もいる】
抗精子抗体は女性だけが持ち得る抗体ではありません。
精子を作りだしている男性自身に抗精子抗体がある場合もあるんです!
作ってるのに抗体がある?
精子はどうなってしまっているの?
などの疑問が沸くと思います。
男性側に抗精子抗体をもっていると、精子が凝集して運動能力が低下したり、女性の体に入ると精子が死んでしまったりして受精が出来ません。
従って、男性側に抗精子抗体を持ってる場合も、妊娠するためには体外受精や顕微授精が必要になります。
※精巣に外傷を受けたことなどが原因で、自分の精子に対する抗体を作ってしまうのです。
体外受精で成功しやすい???
はっきりとした理由は分かっていないそうですが、抗精子抗体を持っている人は、体外受精(顕微授精)での成功率が高く、1度目の移植で妊娠する人が多いそうです。
実際に体外受精に踏み切った経験者のブログを拝見してみると、受診していた主治医から
「抗精子抗体の人は、体外受精が成功しやすい傾向があるよ」
と背中を押されて体外受精に踏み切る方もいらっしゃいました。
抗精子抗体は受精までのハードルを強烈に上げてしまいますが、着床については非常に有効に働いているのではないか?と考えられているそうです。
まとめ
・抗精子抗体の検査は血液検査で可能だが保険が効かない
・抗精子抗体は男女問わず持っている可能性がある
・抗精子抗体への有効は治療法は体外受精のみ
専門医から抗精子抗体検査を勧められた場合、費用は掛りますが検査をするべきでしょうし、気になるようなら主治医と相談して検査を受けるのもアリです。
仮に抗精子抗体が陽性だったとしても悲観せず、主治医とよく相談して治療をすすめていく事が大事です。